| 俳句鑑賞
 湘子の感銘句
 
はじめに
初みくじ
一盞は
四萬十の
花に鳥
わが不思議
蠅叩
父に金
血の中の
海藻を
生きてゆく
落葉して
人参は
 Haiku-Top
 
 by Ikuma Wadachi
 
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 第二句集『雲の流域』より
 生きてゆく力秋暑の靴埃     藤田湘子
 昭和三十五年作。三十四歳。観念と現実がぶつかりあう句。
 披講では「イキテユク/チカラシュウショノ」と句切りながら「力」をやや高く強めに発声する。しかし、意味的には「生きてゆく力」と「秋暑の靴埃」のふたつである。
 「生きてゆく力」は測ったり観たりできるものではない。ただ感じるもの。それを「靴埃」から作者と共感できるかどうかが俳句の楽しさに他ならない。俳人は極微の世界から宇宙を見上げる。朝ピカピカに磨き上げた革靴の先が、午後には仕事廻りで、もううっすらと埃を被っていたのである。
 湘子先生の雅号には、「生死」の念いがあった筈である。句集『一個』には、「死ぬほどの位もなくて旱かな」がある。
 
 
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