| 俳句鑑賞
 湘子の感銘句
 
はじめに
初みくじ
一盞は
四萬十の
花に鳥
わが不思議
蠅叩
父に金
血の中の
海藻を
生きてゆく
落葉して
人参は
 Haiku-Top
 
 by Ikuma Wadachi
 
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 第十句集『神楽』より
 一盞は千利休の忌のために    藤田湘子
 秀吉から切腹を命じられ、利休が自刃したのは陰暦二月二十八日。
 俳句は短い。その十七音の中に姓と号を詠込めば、残された字数はさらに限られる。それでも敢えて「利休忌」では満足できなかった作者の念いの深さが感じられる。湘子先生に「お茶は何流でしたか?」と尋ねると、「江戸千家」と確か答えられた。二十代の頃、紫に白抜きの雪輪紋の袱紗で修行されたはずである。
 「盞」はさかづきの意。私はこの句では、呉音の「サン」ではなく、漢音の「セン」と読みたい。「イッセン」と読んだ次の瞬間、「せんの」とわざわざ振仮名まで付けた同音の響きと重なる。
 「本阿彌光悦卯月は如何なもの着しや」も忘れがたいが、掲出句の飾り気の無さが好ましい。
 
 
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