| 俳句鑑賞
 湘子の感銘句
 
はじめに
初みくじ
一盞は
四萬十の
花に鳥
わが不思議
蠅叩
父に金
血の中の
海藻を
生きてゆく
落葉して
人参は
 Haiku-Top
 
 by Ikuma Wadachi
 
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 第五句集『春祭』より
 父に金遣りたる祭過ぎにけり   藤田湘子
 胸にぐさりと突き刺さる俳句がある。掲句もその一つ。
 鷹昭和五十六年八月号初出。当時二十代の私は、五十代の湘子の向こうに見えた世界に佇ちすくんだ記憶がある。
 石田波郷は「俳句は珠玉の如き私小説」と言ったそうだが、掲句を原作にすればオムニバスドラマの脚本4、5本くらいはすぐ書けるだろう。登場人物を決め、時代設定、場所、配役、テーマ曲と絞っていけば、ストーリーは自ずと浮かんでくる。しかし、原作者の湘子先生は、俳句をドラマにするなどもっての他だと、どの脚本にもOKを出してはくれない。
 父に金なら、母には何を・・・と新刊の藤田湘子全句集を繙けば、「母には海の日の出贈らむ水仙花」があった。
 
 
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