| 俳句鑑賞
 湘子の感銘句
 
はじめに
初みくじ
一盞は
四萬十の
花に鳥
わが不思議
蠅叩
父に金
血の中の
海藻を
生きてゆく
落葉して
人参は
 Haiku-Top
 
 by Ikuma Wadachi
 
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 第六句集『一個』より
 蠅叩尺貫法をなほ愛す      藤田湘子
 純粋に俳句を鑑賞するなら、作者名や一句の由来は不用である。芸術作品との初めての出会いは、そのほうが好ましい。しかし、何度も読み返し、暗唱する俳句や句集では、また違った楽しみ方も存在する。
 昭和五十八年二月四日から「一日十句」の多作を自らに課した湘子先生は、自分の作句の幅を広げようとした。一句の出来の善し悪しを考えるのは後にして、まずノルマとして必ず最低十句は作り発表した。
 尺貫法へのこだわりは、俳句は科学的な頭で創らず、麦や米を食べてきた日本人の体感から湧出るように詠うものだと、宣言したとも読み取れる。深読みすれば、母から鯨尺で叩かれた記憶まで蘇る。
 そして、掲出句の丁度ひと月後、七月二十二日、「蠅叩此處になければ何處にもなし」の禅語の如き一句も生まれた。
 
 
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