| 俳句鑑賞
 湘子の感銘句
 
はじめに
初みくじ
一盞は
四萬十の
花に鳥
わが不思議
蠅叩
父に金
血の中の
海藻を
生きてゆく
落葉して
人参は
 Haiku-Top
 
 by Ikuma Wadachi
 
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 第四句集『狩人』より
 血の中の暗き血淵に凉みをり   藤田湘子
 俳句のみを味わうか、作句の時代背景や装釘も含めた句集の中の一句として鑑賞するかによって読みの楽しみは変わってくる。
 例えば前者。「血の中の暗き血」とは何と観念的な言葉。そして、その思いが「淵に」と引きずり込まれるような重苦しさ。作者の血縁は知らない。体内をめぐる男心の悩みも知らない。しかし、俳句作者の血は、「凉みをり」の下五を得て、一句へと大きな飛躍を遂げている。この下五に勝るものは、到底思い浮かばない。
 また後者なら、句集後書きの「果して、確かに見、まぎれなく思い得たのかどうか」が気になる。何より、一頁一句組の剛胆さ。そして左の頁には、「髪刈つて晩夏さとき身黄昏へ」の哀愁を帯びた一句。暗赤色と黄昏色が句集の空白を染めていく。
 
 
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