| 俳句鑑賞
 湘子の感銘句
 
はじめに
初みくじ
一盞は
四萬十の
花に鳥
わが不思議
蠅叩
父に金
血の中の
海藻を
生きてゆく
落葉して
人参は
 Haiku-Top
 
 by Ikuma Wadachi
 
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 第八句集『黒』より
 花に鳥われに消えたる稿の責   藤田湘子
 昭和六十年四月十一日作。多作のために「一日十句」の責を自らに課し、すでに二年二ヶ月が過ぎていた。
 「花に鳥」と詠い出した上五からは、肩から力みが抜け、虚子の唱えた「花鳥諷詠」が、本心納得できたとでも聞こえそうな歓びが感じられる。確かに俳句は誰の為でもなく、自分の為に作るのである。
 鷹掲載同日作「十万字書き終りたる春惜しむ」と並べて鑑賞すると、作句は天地を映す写経のようなものと感得していたのかもしれない。
 多作修行を始める前は、鞄の中にいつも世阿弥の『風姿花伝』の文庫本を入れていたという。世阿弥の花とも何処かで響き合っている。
 一日十句は、六十一年の節分まで、丸々三年間続けられた。
 
 
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