田辺陶豊作品集「奏」と作品展

 
 

2024年、しまんとぴあ開館記念、 現代工芸展開催

ご案内(2024.06.30 終了)

 

                田辺陶豊「風門」

田辺陶豊、橋村るみ、橋村一彦

月日:6月28日(金)〜30日(日)

施設:四万十市総合文化センター しまんとぴあ

場所:高知県四万十市右山五月町7-7

主催:四万十市教育委員会

内容:現代工芸作品展「不連続の連続」

作家:田辺陶豊、橋村るみ、橋村一彦


1925年生まれの陶芸家、田辺陶豊さんから、「奏」と題する作品集をご恵贈頂いたのは、もう20年も前のことである。

ずしりと重い大判の作品集は、手に取るたびに「ここに留まってはいけない」と、私を叱咤激励して下さる。

中学校の美術教員をされていた陶豊さん。木彫から、板造りの陶芸へ。そして、高知県展・全国県展選抜展・国際彫刻シンポジウムなどへの出品を経て、日本現代工芸美術展・日展(4科工芸)へと、誰にも真似のできない独創の造形力や技術力から、旺盛な制作意欲を見せ、最晩年は、病室でも抽象的な水墨画を愉しまれていた。(2013.01.29 逝去)

この度、高知県の四万十市教育委員会に寄贈された作品や御息女・橋村るみさん、娘婿・橋村一彦さんの作品22点を集め、3日間だけの贅沢な展示会が開催されることになった。
お二人も「日本現代工芸美術展」や「日展」で活躍する陶芸家である。

作品集に寄せられた橋村るみさんの文章を読み返すと、涙が湧き出るように在りし日の陶豊さんの笑顔や幡多弁のイントネーション、四万十川、大岐の浜、入野海岸、大窯のある工房、そして青い風や波を抽象化した作品などが次々と思い出される。

陶器で有りながら、土と釉薬によって造られた彫刻作品。
その大きさを目で視れば、なんとなんと大きな焼き物よ・・・と。
優れたART作品は、目に見えぬエネルギーを発して、私達の身体や心のまわりの微小エネルギーに励起・共鳴して、驚きと快感をもたらしてくれる。

土佐の中村に、こんな偉大な作家が居たことを決して忘れ去ってはいけない。

AIが進歩し、光造形技術が格段に発達したとしても、その種となるのは、先人の遺した魂の波動から波紋のように広がり放射する光の一粒一粒の集まりなのだから。

                                    by Ikuma Wadachi