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  環境メッセ エコプロダクツ高知2002
     講 演 録 (1)     


「経済大国の次に何を作るか 〜国創りの目標と改革する心と行動する力〜」


            フューチャー500会長・三菱電機顧問 木内 孝氏
              2002年2月22日 10:30〜12:00


今から7年前にアメリカでフューチャー500という組織を作った。 それは、不安に思うことがアメリカでも多くて、その背後にはもっと良い生活、意味 のある生き方があるのではないかと考えてみたくて作った。何千人というアメリカ人 をインタービューした結果、5人に1人は今のような生き方をしては良くないと思っ ている人がいることがわかった。 私たちの世代は3つの事で今までの世代と変わっ ている。    1. 自分たちの次の世代は私たちのより豊かな生活を受け次ぐことができない      と初めて思うようになった世代。    2. 地球には限界があることを感じた初めての世代。北極でさえも氷がなく      なってしまう時代。    3. 未来がどういう経済状況になるかわからない世代。 私たちが、今までしてきた中での間違い。  ・大きくなること、拡大することは格好いいこと。みんながいかに大きくなろうか    と考えている。消費することはいいことだ、と皆言っている。本当にそれは正    しいのだろうか?  ・あまりにお金と物にこだわっている。もっと大事な事があるのではないか?  ・科学、技術ということに余りに大きな期待をかけて、やっちゃいけないことをし   ている。せっかくある自然環境の大きなシステムを無謀にも人間は壊そうとして   いる。  ・自然は美しいものを作っている(例:アワビの貝殻)。人間がこれを作ろうとす   ると、大きな投資と廃棄物がでる。これを謙虚に学ばなくては!  ・価格とは?コストの積み重ね、と考えるだけではなく、廃棄・使用された後のコ   ストは含まれていない。そのコストは未来に、先送りされている。  ・GDPとは?今から60年前にアメリカの経済学者がアメリカの産業力を吹聴す   るために作られた尺度。それで、いいのか?安全性。教育指数。など色々な尺度   を考える時代にきている。  ・今は多数決で物が決められる。多数決で本当に正しい判断がされているのか?私   たちが知らされている情報は本当の事とは限らない。常識で考えてこういう事は   してはいけないという事がある。愛知万博をしてもいいのか、という危惧を私は   持っている。   世界中にゼネコンが200万ある。日本に世界のゼネコンの1/3がある。この小   さな日本に60万を超すゼネコンがある。このゼネコンを食わすために、神戸や静   岡に飛行場を作ったりしているのだ。豊田市には430億をかけたサッカー場が   ある。これも全く必要ないもの。佐渡島には信じられないようなプロジェクトが   ある。 足るを知ること。 競争も必要だが、協力はもっと必要。小さな惑星にすんでいる我々は協力していかな いと住めない。 なぜ、人間だけがこんなに急いでいるんだろうか。(コンピュータが初めて入ったと きに、これが入ると人は暇ができると言われた。しかし、今日はどうですか?忙しさ に歯止めがかかっていない!) 高知も四国も日本も綺麗。人間がつまらないことをしなければ、地球は綺麗!この綺 麗さをどうやって保っていくのか。自然からもっと学ぶことがあるのではないか? (欧米の次に自然から学ばなくてはいけないと思って「新・学問の進め」という本を 書いた。) 自然は我々のメインのシステム。経済などはサブシステムという事を忘れないよう に。 私たちはメインシステムを壊すことはできても、作ることはできない!   産業革命以来私たちは色々な物を地球から奪い取った、そのつけを返すことを   考えないといけない。それは、CO2 を6%減らすというレベルの話ではな   く、3度の食事を2度にするというようなレベル。60%位減らさないといけ   ない。人類があと80年しか生きられないと書いた本がある。その本を読むと、   私は孫が老人の世代まで生きられないと思う。 私たちにとって何が大事か?次のことを死に物狂いで守らないと! 1. 地球環境というシステムを守ること 2. 生命を守らないといけない。 3. 次の世代にどういう社会を残すかを考えないといけない。 小学校の校訓が書いてある文鎮には 1. 正直 2. 親切 3. 勤勉 ということ。を書いている。これは当たり前のことだと思うが、親切といキーワードを 社訓に入れている会社はない。でも、21世紀には親切の方が大事だと思う。 私が、本当に言いたいことは、 1. 倹約。借金があれば、倹約して借金を返すのが当たり前、どうして国だとそうなら   ないのか?英国病と今言わないのは、英国は倹約して国を建て直したから。今、   日本のリーダーで倹約を言っている人はいるのか?   今の日本の子供達に欲しい物を聞いても無いと言う。そういう国は滅びる。今、   日本は内部から崩壊すると思っている人は海外には沢山いる。   日本の事を誇りに思っている人が少なすぎる。   倹約をして身の程にあった経済を作ろうとかしている人が少ないから。外国の   学者は幸福は拡大をしていては得られないと言っているのが現状。 2. デフレ。デフレは悪いことなのか?日本は価格が高くて困っている(中国の30倍)。   1991年11月以来、日本は不況にあると言うが、実はノーマルな状態に戻っただけ。   デフレというとデフレスパイラルという事を言って、脅す。程々を考えることが   大事。デフレを一概に悪いと言うことはない。拡大指向なら価格水準は止めどなく   上がっていくが、それよりはデフレの方がいいと思う。   ヨーロッパで18C後半、20C初 ヨーロッパは1%〜数%価格水準が落ちてデフレになっ   た。それは、ヨーロッパのリーダーがそういう状態にした。そのとき、印象派の画   家やクラッシック音楽が生まれてきた。日本では、拡大指向の幻想があるので、芸   術が生まれてこない。インフレは心をいい加減にするから、芸術など生まれてこな   い。それが日本の現状。   程々のデフレはいいものだと思って、私たちの価格水準も欧米並みに下がっていく   ことがいいことだと考えればいいと思う。   少子化もそう。世界の大問題の1つは、人口の爆発。100年前16億人→60億人以上   に。この日本に1.26億人の人口がいるがこれが減った方がいいのでは? 経済大国を作って、こういう状態になった。もっと良い生活ができると思っているが、 そのために、どういう事をすればいいか。経済大国の次に何を作ろうか?どういう国に すればいいのか?国造りを考えていない人が多い。 いい国は3つの事が大事。 1. 言葉。現在の日本語は悲惨な状態。日本は100年前の文章が読めない。  →戦後、漢字を1000に抑える、というような政策があったから。       地名を変えること。   →2代前の人が使っていた言葉がわからなくなっている。 2. 伝統・歴史を大事にする心。若い人は歴史がわかっていない。今の若者は何度も歴   史教育を受けているが、現代の歴史、東洋の歴史をやっていない。朝鮮半島との   昔からの関係がわからない国民になってしまった。歴史教育は昔々の話に時間を   かけて、現代史に届かない。高知の人は他の日本の人よりは歴史観を持っている。   1830年、吉田松陰が生まれ、29才で死んでいる。そのころから今日までの歴史を   死に物狂いで勉強し、どうしてこのような国になったかを勉強しないといけない。   アメリカには、日本を骨抜きにしないといけないというマスタープランがあった   と私は思っている。戦後日本史を真面目に研究している人にできるだけ資料渡すよ   うにしている。これをしないと我々の将来はない。   アメリカは、「当時はロシアが大変だったので、日本の事まで考えてなかった」と   言う。が、現在の日本の現状を見ると、そういう事はないと思う。本当はどうだっ   たか皆さんも考えて欲しい。   歴史は記憶である。最近はコンピュータが記憶してくれると思っている。これが、   心配。記憶は自分でしないといけない。歴史観は自分で持たないといけない。人と   の議論にコンピュータの資料に頼る暇はない。記憶を留めておかないと!   何かの時に、「そういう事は記憶にない」という大臣や役人はいらない。そういう   人を政府の要職につけている我々の責任。 3. 価値観。何を大事と思うか?大事なのは、メインシステム、地球環境、生命、次の   世代にどういう社会を残すか、と言った。   将来の事を考えて、社会にどう貢献できるかを考えていくことが大事。   どういう価値観が大事か?    a. あまりに家族を軽んじている。ニュージーランドは国家の目標は世界市民と      して、しないといけない事に2020年には廃棄物を限りなく0にする、という      国家目標がある。ここで、どんな国の戦略も家族が基本だとはっきり言って      いる。羨まし限りだ。      国のリーダーがこういう事をいう国と、消費ばかり言う国と全然違う。      名古屋が水害にあった時の車がニュージーランドで沢山走っていて、その車      が公害をまき散らしていた。人の国に物を出すときは、迷惑がかからないよ      に対策してから出すのが、親切心だし、基本。そういう事を帰ってきてから      訴えている。      ガンジー:昭和24年位に亡くなった。       「人間は放っておくと7つの罪を犯す。        1. 原則のない政治。        2. 道徳のない商業。        3. 労働のない財産・富。        4. 人格のない教育。        5. 人間性のない科学。        6. 良心のない快楽・遊び。        7. 犠牲のない信仰。」              政治にどういう原則があるか?政治家が昔言っていたことと違うことを       しているのに、マスコミも何も言わない。       失敗した企業は潰れないといけないのに、それにメスを入れようとしな       い。       → だから原則のある政治が行われない。       教育は人格を育てるためのものなのに、日本の教育は物を覚えさせる教育       になっている。       アメリカの教育:子供にどういう能力があるか見て、強いものを伸ばす。               平均的な子供を作るのではなく、個性を大事にする。               自分がどういう道に進めばいいかがわかる。       サッチャー:十代になるかならないか頃から、どうやって人と議論して勝             つかを一生懸命勉強した。       日本の最初の環境庁長官の大石順一(字?)さん(91才)に会って言いたいこ とを伝えてもらった。 o どの環境庁長官は合格か?聞いたときに、その時、「あの政治家は          ヒューマニティがないから駄目だ」と言った。       ガンジーの言葉を時々思い出してもらいたい。       どうしたら、祖国、地域を守る事に一生懸命になる人がでてくるか?       ・祖国という言葉が死んでいる。9/11の事件は一つの目覚ましである。        あの事件以来アメリカがしている事は、国を守ろうという気概だけは        大したものだと思う。ブッシュの事を Mr. Empty と言っている人も        いた。そう言っていた人がブッシュはいい、と言っている。そう言っ        ている背後に自分たちの国アメリカを守るという気概を感じる。     日本は?     1つのキーワードは環境。     20年前には、1万年に1度上昇と言っていたが、今は100年で2度になっ     ている。1時間に4kmだと思っていたのが、ジェット機のスピードで破滅に     向かっている事が判明した。     「我々学者が予想した通りに地球の劣化は進んでいる」と山本良一先生も言っ     ている。     こういうことを20年以上研究している協会がアメリカにある。「World Watch Insutitute」リーダーがレスター・ブラウン。本音の話を聞いたら、「18年     そこのトップにいたが、失敗した。世界の多数の人は地球環境に関心を持って     くれなかった。しかし、私の本音は極めて近い将来に大変な目覚ましが起こる」     と言っていった。(9/11はその1つ) その目覚ましが何千、何万もの生命にかか     わらないことだと思っている。  そういう事を念頭に入れて、エコプロダクツ高知、高知エコデザイン協会をサポート  しましょう! 講師のプロフィール  1935年ドイツ生。慶応義塾大学経済学部卒業。  1995年熱帯雨林保護団体に攻撃されたのと切っ掛けに、地球環境・生命・次世代  の社会を守るNPO、フューチャー500をコロラドに設立。  元三菱電機常務・アメリカ三菱電機会長。  著書に「新学問のすすめ」で自然から謙虚に学ぶことを力説、 「熱帯雨林から学ぶ」が今月1月サンフランシスコで出版された。 (文責:高知エコデザイン協議会 高村禎二)